2008年01月20日

神谷酒場 [田端]

店構えだけで圧倒的な存在感というか、誘われる飲み屋というものがある。
路線名称でいうところの山手線の終点って、田端だって知ってっか?
という、雑学のひけらかしはさておき、明治通りと尾久橋通りが交差する
田端新町かいわいは、しぶーく、ひなびた飲み屋がそこかしこに散らばる界隈だ。
そんな、時代に置いてけぼりをくらった店の中でも、
ひときわくすんだ色彩でたゆたうのが、ここ、神谷酒場である。


すすけた板張りの平屋に、“デンキブラン”と赤いペンキ書きの看板。
縄のれんをくぐると、よ~く使い込まれた木のカウンターに掃き清められた土間。
客層は、常連客のジイさんばかり。カウンター内で客をあしらう背の高いばーさんに、
めったにオモテに顔を出さないジーサンが、調理場を切り盛りする。


浅草・神谷バーの一番弟子だったとかいう、先代だか先々代だかが
40年以上前にのれん分けして出したというこの店。
ゆっくりと、いずれは朽ちつつある宿命の、正真正銘の昭和の遺物。
カウンター正面、博物史的にも貴重な木製冷蔵庫が、いまでも現役にしばしぼう然とす。

「焼酎ハイボール」320円とは、いわゆるレモンハイのこと。
ブリキの缶に、ドライアイスを仕込んだ自家製炭酸製造器で割られる酎ハイは
古式ゆかしい氷なしで、マイルドな口当たりのもの。


つまみは、300円が最多価格。取っつきやすい総菜類が、
生モノから揚げ物、煮物とそろっている。


焼酎ハイボールのアテには、これ。「玉子焼き」300円と「ウインナ」300円。
作ってるのはジーサンだけど、まったくもって、おふくろの味。


「串カツ」350円だってあれだ。大阪流とは無縁の、脂身のついたロースと玉ネギが交互にくるやつ。
ソースだってウスターだ。そう、ここは山手線唯一の北区の街・田端。


油物をひととおり食ったら、「お銚子」300円に替えましょうかね。
「湯豆腐」300円をお供にたそがれる。
温めた粗めの木綿に、かつお節、ねぎ、ユズがつく。
ほろりと豆腐の苦みに、香るユズがこの店唯一の華やかさ。

2本、3本とお銚子をお替わりしながら、この日最後のアテは「煮こごり」300円。


モッチリ、クニュっと、歯切れした後に、ゆるゆる口中でとろけていく、このうまさったら。
ぬるめのかん酒とバクレツ、キワメてモンゼツかつカンノー的な相性。

次はいつこれるかわからんけど、またくるよオカーさん。
と、テキトーな約束をしたら、お年賀のタオルをいただいた。
しみる寒風、沈む闇はとても濃い田端新町。
次、来たときはすべてがなくなっているかも知れないけど、
アナタとわたし、きみとボク。

さよならだけが人生さ。


【神谷酒場】
住所/北区田端新町2-25-1
営業時間/16:30~24:00
定休日/日曜

タグ :田端

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この記事へのコメント
こんな冷蔵庫が 今でも働いてるわけぇ?
Posted by やまんば at 2008年01月22日 13:18
> やまんば さま
動いてるわけよ。トマトとか出てきたり、とか。
Posted by yamabusi at 2008年01月23日 00:43